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当院における鍼治療について

当院には鍼灸師が2名在籍しており、様々な整形外科的疾患に対して鍼治療を施しています。我々整形外科医は、西洋医学に基づいた医療を提供しています。西洋医学は、主に解剖学と生理学という、再現性のある科学的知識に積み上げられた医学理論です。一方、鍼治療は、主に中国医学という比喩を用いた形而上学的な理論、もちろんこれは科学的な手法がなかった時代のためですが、主に古代中国の文献を基にして構築された「経絡」という概念理論をその根拠としており、体内における気血水の流れを重視しています。気とは生命エネルギーのことで、血は血そのものとそれが運ぶ栄養のこと、水は血流以外の体内の水分のことです。経絡理論によれば、身体には特定の経絡(または経絡系)が存在し、それらの経絡は身体全体にわたり、臓器や組織と関連しており、気血水を通じてエネルギーを運び、身体の調和と健康を維持する役割を果たすと信じられ、経絡に沿って特定のポイントを刺激することで身体のエネルギーのバランスを調整し、病気の予防や治療を行えると考えられていました。しかし、現代になり、解剖学や生理学、遺伝子工学まで身近になってしまうと、経絡の存在は概念的なものとなりました。経絡には、神経という人間の組織の中で最も大切な臓器が存在しないのです。


そのため、現代の鍼治療は、主に解剖学的な見地に基づいて施術されています。近年、鍼治療に関する多くの科学的研究と臨床試験が行われ、その有効性や安全性が確認されています。これらのデータが、鍼治療が解剖学的な根拠に基づいて施術されるようになった重要な要因となっており、投薬やリハビリなどに代表される、科学的に有効な保存的加療の一つとして整形外科や他の医療分野で一般的に受け入れられるようになりつつあります。


では鍼を組織、特に筋肉に刺入させることで何が起きるのでしょうか。それは血流の増加です。鍼治療が筋肉内の血流改善をもたらす機序は複雑で、いくつかの要因が組み合わさっています。以下にその主な機序を説明します。


1. 鍼が挿入されると、神経経路が刺激され、局所の血管拡張と血流が促進されます。鍼刺激により組織内侵害受容器である末梢神経が興奮して、求心性に興奮が上行します。この興奮が脳や脊髄の中枢神経に伝わると、速やかに身体が防御反応を取るのですが(反射といいます)、それが血管を拡張させ、血流を増加し、特に筋肉であれば、多くの酸素や栄養をもらうことで逃走または闘争が可能となります。また中枢での反射とは別に、末梢神経間における軸索反射を介した血管拡張作用もあるのですが、いずれの場合においても、拡張した血管が酸素や栄養素を運ぶ血流の増加を促し、組織により多くの栄養と酸素を供給します。


2. 血流の増加は、筋肉内に蓄積された疲労物質や代謝産物などの排出を促し、筋肉の収縮と弛緩のバランスを正常に戻します。それが筋緊張を緩ませ、さらなる血流量の増加につながります。また末梢循環の改善は、局所の炎症の軽減と鎮痛作用をもたらし、同部における栄養状態の改善は、組織の修復と治癒へと繋がります。


3. また末梢循環の改善は自律神経系にも影響を与えます。自律神経系の調節により、血管の収縮や拡張が制御されており、逆に筋緊張により末梢循環が滞ると自律神経に過負荷がかかり、その不調は更なる循環障害をもたらします。鍼刺激により血流が改善されると、自律神経の過負荷が軽減され、適切に調整されるようになると更に末梢循環が改善します。


これらのメカニズムが組み合わさり、鍼治療は筋肉内の血流改善をもたらす即時的な効果を持ちます。筋緊張の改善、血管拡張、炎症軽減、神経調節の相互作用によって、疼痛緩和や組織の回復が促進されることが証明されてきたため、鍼治療は、整形外科的な疾患に対して科学的に有効な治療として認識されつつあり、非侵襲的治療の選択肢として、現代整形外科の治療の引き出しの一つとして確立されつつあります。


では具体的にどのような病態に対して有効であるとされているのでしょうか。

上記のことからも、筋緊張や固縮による筋肉内の血流障害からくる痛み、いわゆる筋肉痛や腓返り、肩こりなどの筋および筋膜性疼痛がその治療対象となります。また筋緊張や固縮による神経や血管の圧迫から生じる絞扼性障害も対象となるでしょう。特に神経血管が筋肉と直交する形で走行する部位や筋肉実質を貫いて表在に現れる部位は絞扼性障害の好発部位であり、多くの経絡のポイントと一致することがわかっています。

また遷延治癒例、例えば褥瘡であったり、火傷などの瘢痕、また筋肉や靭帯など軟部組織の損傷後拘縮例などにも適応があると考えられます。


鍼治療に適している絞扼性障害疾患例


1.腰椎坐骨神経痛(目標となる筋肉:大腰筋、梨状筋、膝窩筋+ヒラメ筋、大腿二頭筋+長腓骨筋)

2.肩こり、主に肩甲背部痛(目標となる筋肉:最長筋、板状筋、肩甲挙筋、菱形筋)

3.肩こり、主に後頚部〜頭痛(半棘筋、僧帽筋)

4.癒着性肩関節包炎、特に腋窩神経または橈骨神経放散痛が生じている場合(斜角筋、小胸筋、小円筋、上腕三頭筋、三角筋)

5.鳶足炎、特に伏在神経放散痛が生じている場合(縫工筋、ハムストリングス)


当院では、理学療法士および鍼灸師が互いの特徴を活かしながら、患者様の疼痛を緩和させるべく、日々努力研鑽しリハビリ治療を提供しています。是非一度、当院のリハビリ鍼灸治療の力をお試しいただきたく存じます。

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